インクジェットプリンタでの顔料インクvs染料インクという話

顔料インクvs染料インクという話、結論から言うと、僕は染料インクのインクジェットプリンタを使っています。染料で写真作品用の品質といえばキヤノンPRO-100S(PRO-100のマイナーチェンジモデル)が最有力でしょうが、僕もキヤノンPRO-100Sを使用しています。
いわゆるプロ用途のインクジェットプリンタはほぼどれも顔料を使うプリンタです。顔料の方が耐久性に優れ紙を選ばずプリントできるメリットがあります。今ではインクジェットプリントもデジタルアーカイバルプリントとして市民権を得、写真作品として販売されていますが、それは顔料のインクジェットプリントです。耐久性の高さから顔料であるべきということのようです。顔料インクジェット印画のことを、わざわざデジタルアーカイバルプリントと呼び換えて表示していることも見受けられます。
僕は作品志向が強い方ですが、それでも染料プリンタを選んだのには僕なりの拘りがあってのことです。染料の方が紙の平滑さと紙の白さを活かしたプリントができます。紙によって左右される部分が大きいこと、それがむしろ利点だと考えます。また顔料では紙に上からインクを乗せるかっこうになるためでしょうが、紙の特質をある程度までは殺してそのインクの特質に支配されます。また顔料では基材に乗っているインクの色によって表面の質感と反射具合が変わることがあります。それらのことが僕には許せなかったのです。ホワイトフィルムやクリスタルといったとても魅力的な紙(正確には紙ではないものもありますが。)が販売されていて、その特質を最大限に活かしてプリントをしたいと考えるのです。紙を染めるイメージの染料に対し、塗膜を作るイメージなのが顔料で、基材の性質をいくぶんか隠してしまうのが顔料でありこの顔料の性質を好みませんでした。僕もあれら魅力的な紙が販売されていなければ顔料を選んでいたでしょう。紙の種類によっては染料ではまともに写真品質のプリントができないことがあります。そういう紙を使うことを断念し、いくつかの染料に向いた紙の特質を最大限活かすことを望んだ結果、染料プリンタを選んでいます。
僕は銀塩でもクリスタルペーパーを好んでいるように、光沢仕上げを好んでいるという理由もあります。光沢を活かすには染料が一般的に有利です。これも紙の表面に塗膜を作らず染み込む染料の特性によります。
ほとんどの場合、顔料インクジェットで十分、いや十二分の品質を得られると考えています。あるいは嗜好によっては顔料の方が向いていることも多いでしょう。顔料でも染料でも対応できる需要がむしろ多く、無理にどちらかにこだわらなくても多くの場合は事足りるでしょう。どちらでも足りるのであれば顔料の方が扱いやすいです。銀塩のカラープリントの経験をアマチュアにしては持っている方である僕ですが、それが顔料であれ染料であれインクジェットの品質は本当に上がり、美しくなったと思います――注意深く撮影し、注意深く画像を処理し、注意深くプリンティングを行う限りにおいては――。銀塩カラープリントもまた注意深くやる必要がありますが。また色空間が大きいということもデジタルによるプリントの利点でしょう。まだ銀塩カラープリントの利点を訴えたいとは思っているものの、インクジェットの品質も素晴らしいものがあると思います。また染料よりも顔料の方が多くの機種がありランクが上のものもあるので、染料の数少ない利点を評価するのでなければ顔料の方が良いでしょう。
染料インクジェットプリントの最大の欠点として挙げられる、顔料に比べて耐久性に劣るという点については僕は気にしません。多少厳しい環境でも10年20年は保つようなので、まあいいんじゃないでしょうか。10年経ったらリプリントすればそれでいいじゃないですか。ある程度以上に保存に気を遣えばさらに保つようですし。
ちなみに、現状で常用しているのはピクトリコのGEKKOパール、GEKKOブルー、ホワイトフィルム、SiHL Metallic Pearl、ピクトラン クリスタルといったものです。いずれも面質が美しいメディアです。