EPSON GT-X970の使用感

追記

フラットベッドスキャナGT-X970でのフィルムスキャンという記事を起こしています。

追記 April 30th, 2010

GT-X970で検索してここに飛んでくる人がやたら多いようです。このエントリーの内容を要約すると、「これだけの製品が4万で買えるんだからお買い得、気になるなら買いましょう」です。GT-X770の後継機であるGT-X820は発表されましたが、GT-X970についてはエプソンは依然沈黙したままです。後継機も気になるでしょうし、私も買ったタイミング的に(発売から1年半と少し経った時点で買いました。)後継機が気になっていましたが、いまだなんらのうわさも聞こえてきませんので、あの時買っておいて良かったと思っています。いつになるかわからない、というかあるのか分からない後継機を待つより安くなった今買ってしまうのも良いでしょう。Canon8800Fを後継機無しに終息させました。すみません、9000Fがラインアップされていますね。このクラスのスキャナはあまり売れていないのかもしれません。ひょっとしたらGT-X970も…という心配がよぎります。後継機が出るならうれしいのですが、分かりません。

はじめに

あまり機材には詳しくないので普段は書かないのですが、GT-X970について検索して飛んでくる人がいるので少しだけレビューのようなものを書いておきます。なんかせっかく飛んできたのにこんなチラ裏ブログ見せられるだけでは不憫なので。「はてブは検索スパム」との悪評もあるようですので少しはそれを振り払う意味でも…いくらかでも参考にしてもらえれば幸いです。

反射原稿の取り込み

フラットベッドスキャナ本来の使い方の反射原稿の取り込みだけど、雑誌の取り込みなんかには十二分の画質と速度を持っていると思います。通常の印刷物ならば400dpiで読み込めばまず十ニ分な品質になるので、最高4800dpi対応(反射原稿で4800dpiまで。透過原稿には6400dpiまで。)というのは完全にオーバースペックでしょう。また後述のフィルムスキャン用途でも最大解像度の6400dpiを活かし切るのがいかに難しいかを書いています。

ある本の表紙をスキャンした画像を置いておきますので見て下さい。一枚目が全体像で400dpi、二枚目が一部分を拡大したもので800dpiです。ペーパーバックとはいえ、表紙なので印刷の線数は多目ですが、網点がはっきりと確認できています。印刷物をより綺麗に保存するためには印刷の線数以上で取り込んで縮小というのが有効ですが、その用途にも十二分な実力です。いずれも画像をクリックすると僕のフォトライフを経由してオリジナル画像にアクセスできるようにしてあります。特に何の調整もせずに8bit×3色=24bitカラーを指定して自動で読み込んだだけです。人物(Layne Staley)が縦長に見えますがこれは原稿がそうなっているだけです。
全体像: 400dpi
一部分: 800dpi
なお反射原稿の読み込みに設定してもわずかに原稿台ガラスから浮いた(0.5mm以下かな?)ところにピントが来ているようです。実用上は問題にならない程度だと思いますが、もっともシャープになるのは少し浮いたところです。これは恐らく原稿台ガラスに完全に密着させられなくても実用に堪えるスキャン品質を確保するための策でしょう。まあ他の個体ではどうなのかは知りませんが。ピクセル等倍に拡大してようやく確認できるくらいのことなのであまり実用上の問題はないでしょう。上の例でも800dpiの方をオリジナルサイズの画像でピクセル等倍表示すればかすかにピンボケしているのが分かると思います。これは原稿台に完全に密着させて読み込んだためです。

他には絵を描く人なんかでも手描きからデジタル化してPhotoshop CSで仕上げるという工程を踏む人もいると思いますが、せっかく描いた絵ですからやはりこれくらいのスキャナは用意しておいてよいのではないでしょうか。基本性能は非常に高く満足できるはずです。仮にこれで満足できなければ業務用の高価なスキャナを使うことになると思います。

フィルムスキャン*1

フィルムスキャンを考えている人がこの機種に興味を持っているのでしょうし、僕もそれを主な用途の一つとして買いました。ただしこの選択についての僕なりの考えは下の脚注の方に書いておきました。そっちも一応参照して下さい。

GT-X770との関係では、ブローニーでもライカ判でも一度にセットできる枚数がGT-X770に比べて多いので、これだけでGT-X770とGT-X970との価格差を支払う価値はあると僕は思っています。スキャンにかかる時間が格段に少なくなっているはず。その浮いた時間をレタッチや撮影に回した方が楽しいと思います。GT-X770は持っていないけれど、GT-X970がGT-X770と同じブローニー一列ずつだったら嫌だなと思いますから。

フィルムホルダは実売5万円近くの機体についてくるものとしては悪過ぎる。スキャナ自体は品質の割に安い値段設定だと思うのでコスト厳しくて難しいなら、別売りででももっとマシなホルダ作るとかして欲しい。フィルムではおよそ3mmの位置にピントがあるようで*2、フィルムホルダもその高さにあわせてある。なお、スリーブのまま読み込むためには板ガラスで挟み込んでスキャンするという方法もある*3

まあ、ホルダがショボいとは言っても他に比するべきものが民生フラットベッドスキャナにあるわけでもなく、予算に収まるならばGT-X970一択という状況でしょう。これだけのものが実売5万以下で買えるというのは年中バーゲンだと思っています。キヤノンの8800Fは試していませんが、ネットでの評判を見てもGT-X970が良いようです。

画質に関しては高解像度(1200dpi以上)で読み込む時にはピンボケしやすくて困るというの以外は特に大きな不満はありません。ここはフラットベッドスキャナを選んだ時点で受け入れるべき欠点です。暗部から明部までちゃんと読み込めてると思います。

富士Pro400の6×8判を3200dpiで読み込んだサンプルを置いておきますので参照して下さい。画像サイズ6892×9362pxあります。フォトライフを通じてオリジナル画像にアクセスできます。画像をクリックしてフォトライフに飛んで、それから右下の方の「オリジナルサイズを表示」をクリックして下さい。画素数にしておよそ7000万画素程度、画像サイズは12MB程度あるのでオリジナル画像の閲覧は注意して下さい。レンズはシュナイダーのApo-Digitar 4.5/90です。これは非常にシャープなレンズです。

次に同じく富士Pro400の6×8判を3200dpiで読み込んだサンプルをおいておきます。こちらは端の方がややボケていますが、撮影時にレンズを絞り切らなかったための原版由来のピンボケです。また撮影レンズが75mmと広角よりのテッサータイプなので、レンズの解像力の問題もあると思います。中心部のピントがあっているところの画質が参考になると思います。レンズはシュナイダーのComparon 4.5/75です。画像サイズは9527×6901pxあります。こちらもオリジナル画像にアクセスできるようにしてあります。

なお、いずれもゴミ取りが適当なのはご容赦を。僕の使っているPCのパワーの問題でこの画像サイズだとゴミ取り処理をするのは結構苦痛なんです。またいずれもフィルムホルダは使わずに原稿台に直接置いて上から板ガラスで押さえてスキャンしています。この方がピントが出やすいので。これらは輪郭強調処理を全く加えていない状態です。輪郭強調処理を加えると見た目上のシャープネスはこれよりも上げることができます。その副作用は大きいのでやりませんが。

これらのオリジナル画像をプリントしてみて下さい。フラットベッドスキャナなのでややピンボケ気味なのですが、それでも非常に高画質なプリントを得られます。フィルムの画質を(民生スキャナでのスキャンなので大きくスポイルしているのですが)実感できることと思います。

僕のブログでアップしているフィルムによる写真はGT-X970でフィルムスキャンしたものです。

サードパーティ製のフィルムホルダ

海外通販になるけれど、良さそうなフィルムホルダも売っている。このサイト→Custom film holders for Agfa, Microtek, Canon and Epson film scanners.です。
V750 & V750-MのものがGT-X970用になる。海外と日本とで型番が違うので注意して欲しい。まだ買っていないけれどそのうち試してみたい。アンチニュートングラスを付けてフィルムの平面性を向上させたり、フィルムの設置高さを変更したりできるようになっているようです。フラットベッドスキャナで読み込みをする際の一番の問題点であるピンボケというのはある程度解消できるのではないかと期待しています。
オーダーフォームに従ってオーダーしてPayPalで支払えばよいだけなので英語力に自身のない方でも頼みやすいんじゃないかと思います。すみません、日本に代理店がありました。こっちで買った方が送料なども安く付くし手軽だし良いと思います。→SilverFast

まとめ

フラットベッドスキャナを利用することが多い人で買えるのならこれくらいの機種は買っておいて良いんじゃないでしょうか。フラットベッドスキャナにしては大き目だしもっと安いのもありますが十分買う価値のある機種だと思います。目立った不満はフィルムホルダが良くないことくらいです。さらに改良した後継機種が出るのなら嬉しいです*4が、現行のGT-X970でも良い選択肢だと思います。エプソンスクエアでも試用できますので悩んでいる方はどうぞ。

EPSONによる専用ページ→http://www.epson.jp/products/colorio/scanner/gtx970/index.htm

*1:お金がそこそこあればNikon Coolscanシリーズを買って下さい。イカ判専用のは生産終了しましたが・・・イカ判からブローニー兼用の9000EDがまだ生産しています。9000EDも終了するようです。今やデジタル画像を得るにはデジカメで撮った方が効率良いし、フィルムで撮っている人は手焼きにこだわるでしょうから、フィルムスキャナというのは難しい立ち位置なのかもしれません。これらフィルム専用のものはスキャン光学系のピントをフィルムにちゃんと合わせてスキャンするのでシャープです。解像度は最新のフラットベッドスキャナの6400dpiなどには及ばないけれどそんな高解像度は必要ないです。6400dpiでスキャンしてもピンボケしていてはそれは意味がありませんから。どんな微粒子フィルムでもどんな高画素カメラでもピンボケでは被写体を明瞭に捉えられません。それと同じです。フラットベッドスキャナでもたしかにフィルムを完全に平面にしてピント面に完全に配置すれば良いのですが、それはかなりの困難な作業です。6400dpiを活かすような精度で作業するのはほとんど無理と言ってよいと思います。そんな極端な高解像度が欲しければもっとお金を用意してフレックスタイトかそれ以上を買って下さい。ではなんでここまで言い切っておきながら僕がフラットベッドスキャナでフィルムスキャンするかと言うと、フラットベッドスキャナの方が安いし反射原稿(プリントとか雑誌とか)も読み込めて便利だからそっちを買っただけです。僕はフラットベッドスキャナとしては高価で高品質なGT-X970を買いましたがこれも「貧者の選択」だと思っています。予算に縛られて機材を選んでいます。買えるのならフレックスタイトが欲しかったです。僕自身は使ったことありませんが、フレックスタイトで読み込んだものを他の人が公開しているものを見ると羨ましく感じます。僕にとって民生フラットベッドスキャナでのフィルムスキャンは妥協の選択でした。

*2:反射原稿と透過原稿でスキャン光学系を切り替えているとのことで、それぞれでピント位置が異なります。エプソンではデュアルレンズシステムと呼んでいるようです。エプソンのGT-X970用のページ参照。

*3:僕の主な使い方です。なお、スリーブのまま読み込むと、フィルムと原稿台の間のみならずスリーブとフィルム、スリーブと原稿台とニュートンリングの出る面が増えるのでニュートンリングは出やすくなります。僕はブローニーが主なので1200dpiに設定しているのでたしかに気にはなるもののさほど目立たないのですが、2400dpiを超えるとかなり目立ってきます。またゴミも目立ちやすくなります。この機種での通常のフィルムスキャンではフィルムホルダを使ってフィルムを浮かせて読むことで、原稿台にのっているゴミをボカして見えなくし、フィルムにのっているゴミの影響のみにしています。しかし、原稿台に直接載せてスキャンすると、原稿台とフィルムと上から押さえる板ガラスとゴミがのり、かつピントの合う面が増えます。このため、ゴミが目立つようになります。

*4:例えばフィルムスキャン用途にピント位置をMFででもいいから設定できるとか。