SIGMA DP2 レビュー

生産が終了し、後継機種のDP2sが発表されましたが、仕様の大幅な変化はありません。大幅な改良が無かったのは残念でもありますが、DP2の時点でそれなりのレベルにも達しているのもたしかですから、とりあえずよいと思います。今後DP2sを購入する人にも参考にしてもらえたら幸いです。何か疑問があればコメントをどうぞご利用ください。

実写サンプル

まずは実写サンプル。いずれもオリジナル画像(通常現像:2640×1760pix、画素補完現像:5280×3520pix)にアクセスできます。画像をクリックしてフォトライフの各画像に飛んで、「オリジナルサイズを表示」をクリックして下さい。
ISO 100

ISO 100 Sigma Photo ProでJPEG画像生成時に2倍サイズに画素補完。

ISO 400

六本木ヒルズに行ってきたのでそのあたりのものです。どれも手持ちです。

ISO 100 デジカメでは夜景撮りする人も多いので需要があるでしょうからこれもアップしておきます。絞りきらなかったせいで微妙に遠景が被写界深度から外れていますね。まあ、参考程度にどうぞ。

周辺画像がどんなものか分かりやすいサンプルも置いておきます。

質感描写に優れるといわれますが、どれほど優れているか分かるサンプルも置いておきます。

赤・紫や緑の高い彩度では飽和しているように見えますが、Sigma Photo Proで確認するとRAWファイルでは階調に関する情報はとれています。sRGBで表現させているのですが、色空間の狭さのせいかもしれません。今度Adobe RGBで撮って広い色空間のモニタで確認したいと思います。

画質

僕はかなり厳しい基準で画質を見ているつもりですが、画質面でのアラはほぼありません。
周辺までビシビシ解像します。正直、周辺の多少の甘さは気にしない方なので、ここまでの周辺像を実現するよりも一回り小さなレンズにしてくれた方が良かったような気もするくらいです。画質が良すぎて文句言われることなんてそうそう無いと思いますが。ただしレトロフォーカスタイプのレンズなのでやはりいくらかの歪みはあると思います。これは僕がSuper AngulonやらSymmarやらの対称型をばかり使っているために感じることなのかもしれません。ほとんどの人は歪んでいること自体気付かないでしょう。ちなみに歪みは単純なタル型です。

レンズ供給のみならずカメラメーカーとしても認知されたい、というのがシグマの社長さんの願いだそうです。その意気込みの反映された良いカメラです。

あとは1000万ピクセルくらいの画像を得られるようにしてさらなる大伸ばしにも堪えるようにしてくれれば普段使いのカメラとして画質面では最高です。まあ、高画素化の弊害が大きいのなら現状でいいのですが。Foveonもさらなる素子の大型化をして大きな画像を得られるようにした方が嬉しく思います。素子を大きくしてカメラが大きくなるならDPの他にDP以上の大きさの素子のコンデジを作ってくれるのも検討して欲しいです。
ディストーションの他にある画質上の問題は、周辺部がわずかに色シフトすることです。レトロフォーカスタイプの標準レンズでこの現象が確認できたのには正直驚きました。Foveonセンサーはよほど斜めからの光に弱いのでしょうか。この点については私はシグマのSDシリーズを使ったことが無いのであまり詳しくはコメントできません。なお色シフトはそれをあえて探してようやく確認できる程度のもので、実用上の問題はほとんど無いとは思うものの、それでも風景写真をDP2で撮って作品にしたいと考える人には問題になるかもしれません。

操作性

全体的な操作性はカメラと写真が好きな人が作ったんだな、と感じる出来です。シャッター速度や絞りの調整はコンデジの文脈で考えると非常にやりやすいものですし、露出補正もやりやすいです。AELもできますし、MFもやりやすいです。フィルムのコンパクトカメラでちょっとした作品のようなものを撮った人には簡単に使いこなせるカメラだと思います。シグマの社長さんが試作機を使って開発にフィードバックしたそうですが*1、とても写真とカメラが好きな方なんだと思います。

問題は散々指摘されているのですが、動作速度くらいでしょうか。全体的な動作速度はDP2のファームが最新の1.03に上がってからAF動作含めコンデジとして十分なものになっているのですが、RAW撮影すると書き込みに時間が掛かるのは気になるでしょう。*2ただしあくまでもコンデジなので動くものを撮るのには向かないと思います。気軽な人物撮りなどには十分に使えますが、本格的なポートレートのように一瞬を確実に切り取るような用途には一眼レフを使うべきだと思います。

また、この高解像度のためでしょうか、手ブレは凄く目立ちます。かなり気をつかいます。まあ、等倍鑑賞なんかしなければいいだけでもあるのですが。ビューファインダVF-21を使って撮ると顔に押し付けて安定したホールドができるので良いでしょう。私はそうやって使っています。ビューファインダでは露出情報などは一切表示されないただのファインダなのですが、AEはかなり正確なので問題ないと思います。ちなみにビューファインダは視度補正がありませんし補正レンズも販売されていません。視度に問題のある人は注意して下さい。日本のように近眼の人の多い国のメーカーなんですからこの辺は少し気を遣って欲しかったようにも思います。

グリップに関しては、取っ掛かりの無いデザインですが、レンズがニョ〜ンと伸びるのでそこを左手で持って右手はリラックスさせて持てばブレにくいと思います。軽量なのでリラックスして構えられるので手ブレは慣れれば減ると思います。*3

AEは白飛びを警戒してのことだと思いますが若干アンダー気味の印象です。*4ただしAE自体は安定しています。安定して若干のアンダー気味に露出が決まります。このカメラの素子は暗部のノイズが目立ちやすくハイライトは粘るようなので+0.3か+0.7EVくらいに設定しても良いかもしれません。

Foveon素子

Foveonユーザーの皆さんには今更言うまでもないことですが、1400万画素というのはRGBの三層それぞれを数えたもので、約470万×3層=1400万画素というわけです。実際に得られる画像のサイズは約470万画素(2640×1760pix)です。素子サイズは20.7×13.8mmで一般的なAPS-C*5よりも一回り小さいです。それでもフォーサーズ以上のサイズなだけあって画像には余裕を感じられます。またFoveon素子は質感の描写に優れた素子で、レンズの良さと合わせて息を飲むような描写を示してくれます。

ただし色の再現性には難しさを感じることもあります。他のデジカメにも言えることなのですが、彩度の高いものは色飽和しやすい印象を受けています。

またISO100が基本感度の素子ですが、ISO200やISO400にすると解像、色再現性、色ノイズいずれでもISO100に比べると劣ります。なるべくISO100で、増感してもISO400くらいまでにとどめておきたいと思います。ISO800以上は緊急用です。ISO400でも普通のコンデジに比べると十分な画質ではあるのですが、このカメラの良さを大きくスポイルしていると思います。

ボディの質感

質感がいいとか悪いとかはどうでもいいです。私の愛用のエボニーのカメラに比べるとデジカメはどれをとっても大したものではありません。きちんと要求したとおりに反応してくれるので良いです。持つ喜びとやらはとうに飽きました。それでも特に悪い見た目や質感だとも思いません。シンプルなデザインに高性能が詰まっています。変にゴテゴテしていないので私は結構好きです。シャッターボタンも背面ボタンも適度なクリック感なのでストレスを感じません。また金属製で表面仕上げも特に凝ったものでも目を引くものでもありませんが、ちゃんとしています。

最短撮影距離

最短撮影距離が28cmなので他のコンデジに慣れている人は寄れないと思うかもしれません。しかし素子のサイズを考慮すると特に寄れないわけではありません。それでも寄りたいという人はクローズアップレンズAML-1を購入すると良いでしょう。

意外と便利なMF

MFはやってみると結構やりやすいです。拡大表示しながらピント調節もできるのでピントを出すのに苦労しません。ライブビューの便利さはやはり良いものだと思いました。

でも馴染めない人もいるらしい

ヤフオクを見てみるとほとんど使われていないらしいDPが売りに出されていることがたびたびあります。JPEG画質が一般的なデジカメよりも見栄えしないことや、動作速度がイマイチであることなどから馴染めなかった人もいるのでしょう。

まとめ

概して良いカメラです。いくらか不便なところもありますが気軽に持ち歩ける高画質ということで重宝すると思います。写真とカメラの好きな人にはオススメしたいカメラだと思います。*6

*1:日本カメラ 2010年3月号

*2:圧縮(可逆)RAW画像なのですが、圧縮に時間が掛かっているのならば圧縮無しのRAWでも良いように思います。

*3:重量のあるカメラの方がブレないという人もいますがそれは構え方が悪いだけです。軽いカメラの方がリラックスして構えられるのでブレにくいです。人間の筋肉は大きな力を出しているときほど出力にムラが出てそれが手ブレになるので、重いカメラほどブレやすいです。変に力を入れて握っているようではいけません。カメラは生卵を握るようになるべくソフトに握るものです。

*4:デジカメではオーバーではまったく情報が無くなるので他社のデジカメでもそんな印象を受けます。しかしそのカメラの画質を最大限に引き出したければオーバーにならない範囲で極力露光は多めに掛けた方が良いと思います。積極的に露出補正していくと良いでしょう。どうでも良いことですが、以前アサヒカメラでデジカメとフィルムを比較する企画がありました。そこでデジカメでは暗部の持ち上げがきくがネガフィルムではできない、だからデジカメのダイナミックレンジはフィルムよりも大きいというような結果を出していました。デタラメもいいところです。ネガフィルムはアンダーに弱いため、焼き込みで画像内の明るさをコントロールする時は暗部に合わせて露出を決めるのが鉄則です。一方デジカメでは比較的暗部の持ち上げがきくが明部がオーバーするとどうにもならないので明るいところにあわせて露出を決めて調整するのが鉄則です。こういった素子やフィルムの特性を無視したテストになんの意味があるのかと呆れました。アサヒカメラの人は自分でプリントしたことも無いのでしょうか。無いのでしょうね。こういうのがカメラや写真に関する情報を提供しているのかと思うと頭が痛くなります。

*5:たとえばニコンDXフォーマットだと23.7×15.6mmです。

*6:と言っても、私は大抵のカメラは使うこっちの側で合わせて使えてしまうタイプの人間なので、違う印象を持つ人もいるかもしれません。