CRUMPLER THE POPULAR DISGRACE

少し高級なカメラストラップはたいていは革のものになります。でも実用上は高品質な化学繊維の方が革よりもずっとカメラストラップには向いていると私は思うのです。
ぐしゃぐしゃに折り曲げても痛まない、変な折り癖がつかない、洗える、編み方で吸湿性も十分に持たせられる、適度な伸縮性を持たせられる、皮膚に直接触れても大丈夫なものが多く開発されている、などなど、化学繊維の利点はとても多いのです。しかしながら、高品質な化学繊維を使ったカメラストラップは5cm巾のものがほとんどです。私はカメラは軽量小型なものを愛用しますので、5cm巾では無駄にかさばってしまってあまり具合が良くありません。そこで細いものが欲しくなるのですが、細めのものはまず安くすることを旨としているばかりで、これらは吸湿性や肌への刺激感の少なさを考慮したものではなく、使い心地はあまり良好ではありません。
少し細めでちゃんと作り込んであるストラップではオプテックのエンビーストラップがあります。これは私も使っています。ニューマミヤ6で使っていて、2台持っていますがそのどちらにもこのエンビーストラップを付けています。しかし作りがしっかりしているのはいいのですが、その巾の割にはステッチと補強布のためにゴツさがあって、このエンビーストラップでもまだコンパクトデジカメやライカレンジファインダーカメラにはデザイン的に不釣合いに思えるのです。同じくオプテックのBIN/OPストラップQDというのもありますが、これはネオプレーンを切り放しにしていて角があるので気に入りません。
カメラストラップは世にたくさんあれど、なかなか希望のものは見つけられないのです。
CURAの絹糸真田紐ストラップは化学繊維とは違いますが絹ということで肌に優しく強度もあるので良いと思ったのですが、長さ調節機構が無いので私は選べません。冬と夏で着るものが変わると適したストラップの長さも変わるので必ず長さ調節機構は私は要ります。実物を触ると恰好も良いししなやかだしとても気に入っただけに残念です。
さまざまに物色してこれなら使いたいと思ったのが、クランプラーのポピュラーディスグレイスでした。このストラップはちょっと質の良さそうなナイロンで首肩に当たる部分にネオプレーンを巻いたものです。ネオプレーンはオプテックのストラップで心地良い素材だと知っていますので、これは良いのではないかと思いました。シンプルながらステッチがあまり主張せず、デザイン上もなかなかのものだと思いました。
実際に購入して使っていますが、上で書いたような化学繊維の美点を活かし、さらに3cm巾なので小型のカメラにもやや太いかなという程度で大袈裟過ぎるきらいもあまりありません。また上質な化学繊維を使っているので安っぽさも無く持っていて恥ずかしい感じはありません。
ただ難点は現行型のポピュラーディスグレイスではネオプレーンの上にゴムをまだらに塗布して滑り止めになっています。これではせっかくのネオプレーンの心地良さが殺がれます。たしかにレビューで肩当てに滑り止めが無いことを問題視していたものもありましたが、よく滑ることはネオプレーンの良さだと思っているだけに私にとっては残念です。
ペンタックスリコーGR、ミノルタCLE、シグマDP2にはこのポピュラーディスグレイスを取り付けました。このポピュラーディスグレイスでもまだ3cm巾なのでもう少しだけ細くならないものかと思っていますが、ひとまずこれをしばらく使っていようと思います。中判カメラにはエンビーストラップ、それより小さいものにはポピュラーディスグレイスとしてみます。
化学工業がこれだけ発達している現代に化学繊維のストラップを求めて好みのものがなかなか無いというのも変な話です。良質で小振りな化学繊維のストラップを求めている私のような人というのは少ないのでしょうか。化学繊維の衣類も安物ばかりでは決して無く、良質なものも多いのです。カメラでは大判カメラの蛇腹も革が推奨されることがあり、私も革蛇腹のエボニーのカメラを使っていますが、リンホフテヒニカルダンの蛇腹のように化学繊維を上手く使ってとても良い蛇腹にしているものもあります。高級品は革というイメージに世の中振り回されているような気がします。化学繊維でも種類によっては十分な質感は出ますし、縫製や作りにこだわれば良いものはできると思います。革を使えばよほどの設計ミスが無ければそれなりの物には仕上がるので革を使うのはある意味では保守的で野心的なものではないと思います。