ビューカメラ

ビューカメラという形式のカメラがあります。4×5インチや8×10インチなどのフィルムを使う大判カメラは多くの場合ビューカメラです。このビューカメラというのは、

  • 撮影光学系の他にファインダー光学系を用意せず
  • グラウンドグラスに映した像を見て構図・ピント合わせを行い
  • 撮影する時にはグラウンドグラスの位置にフィルムなど感光材を置いて露光する

カメラのことです。
一眼レフカメラはこのビューカメラと同じように撮影光学系によってスクリーンに映した像を見ますが、これは撮影面にスクリーンを配置せず、撮影時にだけ撮影面に像を導きます。レンジファインダーカメラは撮影光学系の他にファインダー光学系を用意し、撮影光学系の繰り出し量を検出してピント位置を判定することで写す像を見なくてもピント合わせをできるようにしたものです。
たびたび勘違いされるのですが、リンホフテヒニカもこの定義によってビューカメラです。テヒニカやトヨフィールドが代表機種であるいわゆるフィールドタイプの大判カメラ(リンホフの用語ではドロップベッド付のビューカメラ)もビューカメラです。またジナーpやトヨフィールドが代表機種であるモノレールを持つカメラもビューカメラです。ビューカメラという大きなくくりの中にフィールドタイプとモノレールタイプがあるのです。そしてこのフィールドタイプとモノレールタイプという分類も、アルカスウィスF-Lineやリンホフテクニカルダンはフィールド用ながらモノレールを持つとか、エボニーSW23およびSW45はフィールドタイプでモノレールは無くアオリも簡素化されているもののモノレールビューのような構造を持っているとか、例外は多々あり、分類の境界は結構曖昧です。
また、上述の定義を見れば120や220のロールフィルムを使うビューカメラもありうることが分かります。実際にそのようなカメラが作られています。また135フィルムを使うことも考えることはできます。24×36mmを超えるサイズのデジタル撮影センサーではライブビュー機能が貧弱なためにビューカメラで使われることが少なからずあります。

この定義を改めて見てみると、最近のライブビューデジタルカメラはビューカメラに近い形式です。グラウンドグラスを使わずに電子的な中間媒体を経て像を見ているというのが違いですが、グラウンドグラスとルーペを使うかセンサーから回路を経て見ているかというだけの違いだとも言えます。
ビューカメラはもっとも初期からあったタイプのカメラですが、ここから連動式レンジファインダーを装備したカメラや一眼レフカメラなどが作られてきました。しかしデジタルセンサーの登場によって再びビューカメラに近い形式に戻ってきたのです。やはりレンズが撮影面に結んだ像をそのまま見るのがもっとも直截な方法です。「見たまま写る」という一眼レフの利点を得ながら、デジタルセンサーはフィルムカメラと違って一眼レフの機構が必要が無くなったのです。*1デジタル技術によってカメラの方式が先祖返りしたとみなせるでしょう。さらにフィルムと違って不可逆な変化がデジタルセンサーには起こるわけではないので、構図やピントを決めてからグラウンドグラスからフィルムへと置き換える必要もありません。色々な仕組みを使って便利なカメラを作ろうとしてきたのですが、デジタル技術はその仕組みを一気にパスしてしまったのです。

*1:もちろん2013年現在も一眼レフ形式のデジタルカメラはあります。自動焦点の動作速度であったり、ファインダーの見え具合であったり、まだ乗り越えていない壁はあります。レンジファインダーデジカメも、ライカ(とエプソン)の例外的な存在としてですが、あります。