α7 / ILCE-7にL/Mマウント広角レンズを装着した時に発生する周辺解像の悪化に関して

α7とLおよびMマウントレンズ

α7とても気に入っています。本当に買って良かったと思っています。純正のレンズのパフォーマンスも含めて気に入っています。いささか不満なところもα7にはあり、今後の改良を期待してはいますが、12万円というその価格の低さもあって、総合的には非常に満足しています。
しかしながら、やや期待した働きを見せてくれなかったのが、LおよびMマウントの広角レンズを装着した時のパフォーマンスです。周辺落ちや色シフトはCapture Oneでかなり補正できますし、多かれ少なかれ補正を入れて使うのが現在では普通であり私はさほど問題視しませんが、周辺の解像が悪化します。この解像悪化はRAW現像では救いようがありません。
現象として見受けられることを簡単に分類すると、次の3要素になると思います。

  • 周辺解像の悪化
  • 周辺落ち
  • 周辺色シフト

このうちの周辺の解像の悪化を僕は今回の話題にしています。
この周辺解像の悪化はおそらくはセンサーのカバーガラスの厚みのためにピント位置が変わっていることが大きな理由となっていると思います。このカバーガラスというのは、ローパスフィルターの他にも赤外線・紫外線カットフィルターや保護のための硬質ガラスも含みます。そのために単純にローパスフィルターを取り払うだけでは解決しないでしょう。実際にローパスフィルターを装備しないα7Rにおいても周辺解像の悪化が見られます。また画素ピッチの狭小化(フルサイズセンサーを前提とすると画素数の増加)が主因でもなさそうなことは1200万画素のα7Sにおいても同様の現象が見受けられることから推測できます。デジカメのセンサーの前にはローパスフィルター以外にもフィルターが被せてあって、これは少なくとも現在においては必要不可欠なものです。
光を通す媒質は様々なものがありますが、屈折率が異なります。その屈折率の違いは光学距離の違いとなってレンズのバックフォーカスに影響します。当然ながらフランジバックは媒質が空気であることを前提に設定されています。レンズとセンサーの間に空気以外の媒質が挟まっていると、空気との屈折率の違いにより光学的な意味でのフランジバックが異なってしまい、ピントが出せなくなります。それを吸収するようにデジタルカメラではフランジバックを調整しています。
僕の手持ちのレンズの中でもっとも激しい周辺解像の悪化を見せたレンズにコシナフォクトレンダー ウルトロン28mm F2があります。このレンズによる作例を交えて少し書きましょう。

実写テスト

ただのテストなので壁を撮れば十分でしょう。僕の部屋の壁を撮っています。ソニーα7、RayqualのαE-Mマウントアダプタ、コシナフォクトレンダー ウルトロン28mm F2です。エクストラファインのJPEG保存、ISO200、カラーバランスはプリセットです。白い壁なのに露出補正すらあまりやっていないいい加減なテスト撮影ですが、ピントに関することなので一応三脚は使っています。元画像をそのままアップロードしています。画像のリンクから誰でも元画像にアクセスできるようにしてありますので仔細に見たい方はリンクを辿って下さい。縮小されたこのページの画像でもだいたいわかると思いますが。

(i) F2で中央をターゲットに1m弱に合焦


周辺は流れています。しかしよく見ると広角レンズによく見られる収差などというより何かピンボケのような気もします。

(ii) F2で左上端をターゲットに0.7mに合焦


周辺でピント合わせをすると真ん中がピンボケしています。周辺は明らかに(i)の中央で合わせたケースよりも改善しています。

このように、中央と周辺でピントがズレるのです。絞ることで焦点深度も大きくなるためでしょうが、それなりに改善はします。しかし絞れる分にも限りはあるので完全に解消できません。このレンズにもともと像面湾曲があるのは事実なのですが、ここまで酷い像面湾曲も呈していないのがフィルムカメラで使った時に確認したこのレンズの本来の性能です。このレンズはα7とは相性が悪いということでしょう。もともとこれらのMマウントレンズのために設計されたライカのデジタルM型で撮ったこのレンズの作例ではこのような現象は僕が知る限りありませんでした。僕はライカデジタルカメラは持っていませんので比較はできないので悪しからず。α7とライカデジタルM型の両方を持っている人にお願いしたいところです。
実はF2での(i)と(ii)の作例の他に、絞ったF8の作例や遠景での作例も撮ってあるのですが、はてなフォトライフの容量制限でこの2枚で終わりです。今月の利用可能容量はこの2枚で使い切りました。僕としてはできる限りのことはしました。お見せできないのが残念です。結果としては同様の傾向です。
ファインダーや背面液晶でもピントがズレているのは確認できます。中央で合わせてからピント拡大機能を使って周辺にターゲットを移動するとボヤけています。周辺にターゲットを置いたままフォーカスリングを回して周辺でピント合わせを行ってから中央に戻ると今度は中央がボヤけています。
度々周辺像が流れると表現されますが、実は周辺がピンボケしてしまうというのがより正確なようです。

まとめ

おそらくはセンサーへの光の入射角によってピントズレの量が中央と周辺で異なり、そのために入射角が大きな広角レンズで顕著なのでしょう。僕の手持ちではヘリアー50mm F3.5やアポランター90mm F3.5といった標準や中望遠のレンズは問題無く使えます。
なお、本記事ではα7の問題だという意図はありません。ソニーもアダプターでライカ用レンズを取り付けて展示していたこともあるとはいえ、やはり他マウントのレンズを装着しての話ですから、ソニーが改善するべきだと言うのも今回上げた作例と同じようにピンボケした話でしょう。α7をマウントアダプター前提で考えている人もいるようなので参考になればと思って書きました。むしろ図らずもL/MレンズのためのデジカメであるライカデジタルMシリーズの優れた性能が証明された恰好になっていると思います。
現在出ているソニー純正のFEレンズはなかなか高性能です。*1FEレンズを使用することをまず考えておけば良いでしょう。
先ほどのフォトキナでソニーの純正レンズの拡充、特にソニーツァイスFE16-35/4が発表されています。広角レンズはこのFE16-35/4をまず使うべきなのでしょう。28mm F2のレンズも結構大柄のものが発表されています。多分僕はFE16-35/4だけで済ませると思いますが、明るい広角レンズが欲しい人は28mm F2の方も検討してみるとよいでしょう。なお、28mm F2のFEレンズには純正のワイドコンバーターで20mm F2としてやF2の魚眼レンズとしての使い方もあるようです。

*1:一部で悪い評判もあるようですが、むしろα7Rというレンズ性能チェックをするためのようなカメラが純正に最初から用意されたことが不運でした。3600万画素のα7Rで他のデジカメでするようなピクセル等倍でのチェックなどすると、少なくないレンズで甘さが見えます。α7Rが当たり前に売られているので感覚が麻痺している人もいると思いますが、高画素デジカメの代名詞だったニコンD800/D800E/D810と同等の画素数です。フィルムの6×8判を2400dpiでスキャンすることでやっと3600万画素より少し大きな画像ができます。6×8判ですから、実画面サイズは56×75mm程度です。24×36mmのフルサイズセンサーより短辺・長辺ともに2倍以上のサイズがあります。また2400dpiでのスキャンはかなり気を遣ってやらなければなりません。3600万画素というのはそれだけの画素数なのです。α7やα7Sの画素数で足りる人がほとんどなことを考えると、24×36mm判用にしては小柄・軽量・安価なレンズにして性能と開放F値も十分に満足できるレベルのレンズが出ています。