写真家にとって、都市は格好の被写体である。

写真家にとって、都市は格好の被写体である。そこに住んでいる人にはもちろん物理的に近いからというのもあるけれど、人間が交わる場には面白さが集中するというのもあると思う。都市は人間が住んでいて人間を感じることもできるけれど、人間を超えたものもそこにはあって人間を感じないで撮ることもできる。

僕もまた都市で撮っている。でも都市を撮ると言ったときにはアッジェのパリなんかが典型的でどこかの都市を一つの塊としてその都市を網羅するよう撮るものだけど、そんな風には僕は撮っていない。ある都市の特徴や風物を伝えたいとも思わない。つまり東京で撮っているわけなんだけれど東京を丸ごと撮りたいという欲望は無くて、東京の中のごく一部の地域を撮っている。それも森山/荒木なんかの新宿とも違って特にこれと言った強さのある地域でもない。どこで撮っても良かった。僕がそこを撮っているのは、そこが近くにあったからでそれ以上の理由は特に無くて、それでもその理由の無さを肯定したい。

さて今発売中のフォトグラフノート No.3では「特集 都市を撮る」が組まれている。作品のみならずその撮影風景までも収めてあるのはありがたい。写真を観ることは多いが写真を撮ることを見ることは意外と少ない。作品の裏側を覗き見してしまうようなものでちょっと品の悪さも感じるけれど面白い。このフォトグラフノートという雑誌はかなり意欲的なもので、発行間隔はちょっと長めの分毎回数10頁に亘って特集が組まれていてその質も高い。今回も森山大道には20頁程度、他の写真家にも10頁程度が割かれている。No.1とNo.2も面白かった。デザインノートの別冊、デザインノートextraという枠が与えられている。既存のカメラ雑誌が難しい局面を迎える中、こういうのが元気に活動している。