倉谷卓展 "After The Sunset"


被写体は昭和20〜40年代に建てられた団地の庭で、中でも、長い間大がかりな整備が行われていないようなところを選んでいる。
そこにはかつて暮らした(または今も暮らしている)人々の痕跡が様々な形で澱のように堆積している。
主たちの面影を感じさせるような、思い思いに設置された人工物、打ち捨てられたガラクタ、それらを覆いつくすように繁茂する多種多様な植物たち。作者はその一つ一つに意識を潜り込ませ、それらが現状に至るまでの物語を想像する。通り過ぎた人々、時間、出来事に思いを馳せる。
もちろんそれは勝手な妄想に過ぎないが、かつてここで流れた時間と今ここでカメラを向けている作者の時間がひとつながりである事を確かめる行為は、今という悲観的な気分になりがちな時代にあるわれわれの「生」が、連綿と続く膨大な過去の時間といのちを背景にして成り立っている証明である。
強い光が過ぎ去った薄明の時、暗闇が視界を奪ってしまう前に作者は自分の立ち位置を、踏みしめてきたものを、確かめるためにシャッターを切った。カラー16点。

<作者のプロフィール>
倉谷 卓(クラヤ タカシ)
1984山形県生まれ。2005年日本写真芸術専門学校写真芸術科卒業。06年同校写真研究科中退。07年コニカミノルタフォトプレミオ2007入選。08年同特別賞受賞。
写真展(個展)に、07年「淵」(コニカミノルタプラザ)がり、(グループ展)に08年フォトプレミオ年度賞受賞写真展(コニカミノルタプラザ)がある。

http://www.nikon-image.com/jpn/activity/salon/exhibition/2009/07_shinjyuku-2.htm

写真は今そこにあるもののその表面しか写らない。今というのは今よりも前の時間の堆積の末にできたものである。今を通して過去へと向かう旅を作者はしている。若い作者らしく過去への憧憬を抱いているように思える。

どうでもいいけれど一点、猫が写っていたが顔を横に振っていて被写体ブレしていた。ホントに猫っていらないことしかしないよね。