今井智己×服部一成 "光と重力"展 アーティストトーク Feb. 19th, 2010 於リトルモア地下

先週に引き続き今井さんのトークを聴いてきました。

今回は今井さんの新しい写真集"光と重力"のデザインを担当したデザイナーの服部一成さんを迎えてのトークです。

先週は金村さんに今井さんが色々と尋ねていたのですが、今週も今井さんはゲストの服部さんに色々と尋ね、今井さんのことよりも服部さんの話が多かったです。このあたりは写真家らしいと思いました。写真家は基本的に口下手で、自分の写真についてあれこれと語ることが不得手です。いつも何かを言いかけてはそれが口の中で止まってしまい吃っている。もちろん例外も多いですし、特に海外の写真家は自分の写真についてそれは饒舌に語りますが。今井さんは写真家らしい写真家で、自分の写真について語りにくさを抱えているようです。

私はそんな自分の写真について戸惑い語れない今井さんのことが好きです。*1

服部さんは僕の知っているところでは瀧本幹也"Sightseeing"のデザインや中平卓馬の回顧展の目録写真集"原点復帰 -横浜"も手掛けた人です。

今回のトークで印象に残ったのは、「『名作写真集』にしないように気を付けた」「今井智己の8年間がこの一冊に詰まっています*2というようにしないようにした」と服部さんが言っていたことです。今井智己の写真には、『名作』といった雰囲気よりももっと普通の立ち方が合うだろうと思ったそうです。

聴衆は女性が多かったです。デザイナーをゲストに迎えているということもあったろうとは思いますが、前回の金村さんをゲストにした時も女性が多かったあたり、女性ファンの多い写真家なのだなあと思いました。たしかにそう思って写真集を眺め直すと納得する感じはあります。素直でオシャレな雰囲気の写真とも読みうるなと思います。ただ、実際は8×10のカメラで撮っているので、そんなオシャレなものではないのですが。8×10での撮影は肉体労働です。オシャレな写真は私はあまり信用しません。オシャレそうでありながらそこから遁れて行くのが今井智己の写真だと私は思っています。

8×10のカメラを使っていますが、撮影してからプリントするまで写真がどうなるかはよく分からないそうです。ピングラが大きいのでうまくプリントまでイメージできそうな気がしてたのですが、違うようです。

二週続けてのトークでしたが、面白かったです。同じ人でもトークの相手が写真家であるかデザイナーであるかでまったく話の内容が変わりますね。両方とも行っておいてよかったです。

*1:もちろん、「見て分かることだけ分かればいい」なんて言って写真について語ることを放棄すると、市場からは無視されてしまう。だから生きていくためには自分の写真について的外れだろうがなんだろうが語らないといけないけれど、そこに困難さを感じ続けられる写真家が好きです。自分の作品について語りたければモダンアートでもやっていればいい。

*2:前作"真昼"から8年経っていることから。