杉本博司 歴史の歴史 金沢21世紀美術館

現在金沢21世紀美術館で開催中の杉本博司の歴史の歴史展を見てきました。とは言っても"Lightning Fields"及び"Lightning Fields Illuminated"が主なお目当てでした。本邦初公開とのことです。写真乾板の上に人工的に稲妻を走らせて感光させて作ったものです。写真材料を使っているけれどレンズ(あるいはピンホール)で結像させて得た画像ではないのでフォトグラムと言った方が近いでしょうか。"Ligtning Fields Illuminated"は乾板そのものを後ろから照らしてネガ像をそのまま見せています*1。"Ligtning Fields"は乾板から一部を切り出して印画紙でプリントしたものです。
稲妻はとても細かい模様を作り出していて無限にディテールがあるようなただ形の美しさだけが際立つものでした。杉本自身の緒言にあるタルボットがどうだとか、そんなことはどうでもよくなるような純粋に視覚的な快楽を与えてくれるものです。僕は極度の近眼なので眼鏡を外すと普通の人は近すぎて逆に見えなくなるような距離でこそ視力がもっとも良くなるのですが、眼鏡を外して細部を眺め入ってもそれでもまだまだディテールが隠れていて、果てしなく見ることを求めてきます。プンクトゥムがそこらじゅうに溢れていると感じさせるものでした。それは本来のプンクトゥム論とは外れる感覚なのだとは思うのですが。
"Seascapes"の展示もありましたがそれはまた今度。
杉本博司 歴史の歴史

追記(2009/2/16): フォトグラフィカの2008 winter号杉本博司について扱っています。この展覧会の案内も出ています。

明るい部屋―写真についての覚書

明るい部屋―写真についての覚書

*1:"Illuminated"はネガのままなのでそれ自身が見えるものではありません。あくまでもただの写真的な効果の産物です。